循環型社会の実現に向けて

藤本林業所は、循環型社会の実現を自社のテーマにしています。
一般的に、山から切り出された木は、建材として製材され、家などの建築材料となり、その後古材としてリサイクルされたり、燃料となるなど、一連のライフサイクルがあります。
この基盤となる基本的なサイクルの中には、細かな「木の行くべき場所」があります。
木は言うまでもなく生物であり、生えていた環境に強く適応しています。
したがって、木はできうる限り生えていたその地域で利用されるべきであり、このことによって、最も強い強度が実現されます。
人間がそうであるように、木にも「適材適所」があるというわけです。
弊社が地産地消にこだわるのは、木を最も適した場所で使っていただきたいからです。

理想的な循環型社会を実現するためには、自社一貫生産が最も適しています。
山から木を伐採し運び出し、製材し、建設し、解体し、リサイクルするためには、その全ての工程を1社が行うほうが、より無駄のない地産地消を実現できると考えています。

【地産地消】

そこにある材料を使うことで、風土に合った建築物ができあがる。そうすると、建造物に対して自然と「愛着がわく」。自分の山の木を使った、あそこの山に生えていた木を使ったなど「地産の材料」を使うことが、直接愛着に結びつく。この理念が藤本林業所の核である、と言っても過言ではありません。つまり、"篠山の山の木"を、"篠山で製材"し、"篠山で使う"。それが弊社の考える「地産地消」の道筋です。

当然のことですが、山によって生えている木は異なります。藤本林業所では、作業に取りかかる際にまず山の木に番付をします。そして、建築現場においても、どの部分に何番の木を使用するということを予め決めておきます。実際、建築作業を行うときには、山の木の番付と、住宅で使用する木の番付が合致していないといけません。建築過程において「何番の木が取れていない」という状況が発生することがありますが、そのときは「山の木の番号の何番から何番のなかから探す」という作業を徹底し、何百本という木がある山林のなかならその番号の木を出してきます。そして該当する番号の木を引き、使用します。これこそが本来の、家を建てるときの木の持っていき方であると考えており、同時に弊社が「地元の山」にこだわっている理由でもあります。

【自社一貫生産】

地産地消を実践しようとすると、大変時間はかかるのですが、どうしても自社一貫生産となってしまいます。
山があり、そこから伐採・搬出した木を製材します。製材したものを乾燥、養生させて、建築に使います。しばらくの時間が経過したとき、どうしてもその「建築」を解体しなければならないときが訪れます。ただし、ここで重要なのは「潰す」のではなく、あくまでも「解体する」という点です。つまり、解体した建築材料を、再び製材して、乾燥、養生させて、建築に利用する・・・そのサイクルが繰り返される場合もあれば、製材した後に家具などの作製に活用されたり別の用途で利用される場合もあるのです。家を終わらせることなく「次世代へとつなげていく」、この流れがある限り、すべての作業工程を一貫した自社管理のもとで行う必要があると、弊社は考えております。
そもそも、お客様から事業を「請け負う」ということは、"その家を請け負う"ということであると弊社は考えております。すなわち、建築を受けるのではなく、「その家自身を受ける」ということです。例えば「100年持つ家」を建てるとします。当然、その100年の間には修繕やリフォームなどいろいろな作業が入ってくるわけですが、その適切なタイミングで修繕するなど手を施さなければ、その家は終わってしまいます。では、終わらせず100年持たせようとするならば一体何が必要なのかと言うと、それは「その家が持つストーリー」だと考えます。たとえば修繕の際に、かねてから使用していた古材や古建具を再び使用する。そのように「つなげて」いくことによって、「なんでこの家があるのだろう?」という物語の流れを作り次世代へと受け継ぐとともに、住む人々は家に対する愛着がわいてきます。まさにこの流れが、弊社が目指す建築のあり方です。お客様から依頼を承ると同時に「物語」を作るための思考が始まり、どこの木を使うのがいいだろうか、どういう風に建築するのがいいだろうか、という思考へと発展していきます。これこそが弊社の考える家を作るための流れであり、お客様と建築物とを結び「愛着」を芽生えさせるきっかけづくりであると考えております。

【新月伐採】

藤本林業所では、建築材に適した材料を採取する昔から伝わる方法「新月伐採」という伐採方法を実践しています。自然界におけるバイオリズムを活用した伐採の方法です。たとえば満月のとき、木は元気で水をたくさん吸収します。一方で新月のときには木は落ち着いており、吸水率も少なくなります。伐採期間は秋(10-12月)、新月の前後一週間と限定されています。伐採の際は谷側に倒し、山に向けてなるべく長時間葉枯らしをします。そうすることで、水分がものすごく落ちます。木は伐採した後にも水を排出していくので、驚くほど軽量化します。
伐採時の木の断面の色、これがその木が持つ本来の色です。そのうちに酸化して、木の色が変わっていきますが、空から降ってくる雨にあたったり、晴れた日にはお日様にあたって乾燥したりを繰り返すことで、その木の色が出てきます(ただし、この繰り返しにも限度があり、やりすぎてしまうと木に割れが生じてしまうので、その見極めが非常部重要な鍵となります)。この繰り返しの作業が本当の「乾燥」工程であると考えており、この丹念にプロセスを実践することによって弊社が使用する「木」ができるのです。

【木の居場所探し】

「木の居場所」と言いましょうか、 "その木が本来的に行くべき場所"というものがあると思います。広い山林野のなかで、たくさんの木々はそれぞれ異なる状況のもとに生息しています。たとえば、多かれ少なかれ傾斜の緩急の違い、日当りの良悪の差などがあり、その状況は本当にさまざまです。ですので、基本的に「同じ木」というものは2本と存在しないのですが、弊社ではそれこそが「風土」であると考えています。
風土に合ったものを作る、その作業工程においては「木の居場所探し」も重要な仕事であると考えています。その木はどこに生えていたのかをきちんと把握し、「行くべき場所」にその木を使う。「木の居場所」を知っているか知らないかによって、製材や建築現場で使用する場面でも大きな差が出てくると考えています。